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第4期テーマ「桜×地域」株式会社クラセル桜川 インタビュー記事

if design project第4期のテーマ「桜×地域」のテーマオーナーとして参画いただくのは、株式会社クラセル桜川。

クラセル桜川は、「暮らし続けられる・暮らせる桜川市を実現する」という理念のもと、桜川市民を笑顔に導くリーディングカンパニーになることを目標に今年(2021年)2月に創立された新しい桜川市の企業です。

桜川市と桜川市商工会の出資によって設立された本企業は、地域のパブリックな部分を担う民間企業が必要との考えから、地場産業を活性化すると共に観光などの新たな産業を創出することで、地域へさらなる収益をもたらすことを目指しています。

今回は、そんなクラセル桜川の設立に奔走し、現在はクラセル桜川の総務企画室長(桜川市からの派遣)でもあり、今年の地域コーディネーターとしても牽引いただく、近納裕政(こんのう ひろまさ)さんにお話をお伺いいたしました。

クラセル桜川のメンバー(左:近納裕政 総務企画室長、中心:渡邉雄司 代表取締役社長 右:勝村勇輝 取締役)


豊かな自然に恵まれ、多くの資源が眠るまち、桜川

桜川市は、日本百名山の1つである筑波山の北側に位置し、八溝山地の山々の裾野に広がる平野部を一級河川桜川が流れる日本の原風景ともいえる豊かな自然に恵まれた田園風景が広がるまちです。

こだますいかや樹熟トマト、常陸秋そば、酒寄みかんなど様々な農作物が採れる桜川市は、迎賓館や最高裁判所など有名建築にも使われている御影石の産出地でもあり、日本三大石材産地としても知られています。

また、市内の真壁地区には今も江戸時代の町割りが残り、幕末から明治期の重厚な見世蔵や土蔵、大正から昭和初期の町家や洋風建築などの歴史的建造物が多く残る町並みが県内で唯一「重要伝統的建造物群保存地区」にも指定されている等、情緒溢れる町でもあります。

「重要伝統的建造物群保存地区」に指定され、今なお昔ながらの街並みが残る真壁地区


そんな中、今回のテーマでもある「桜」は桜川市を語る上で、欠かせないキーコンテンツの1つです。

桜川市は「西の吉野、東の桜川」と、日本を代表する山桜の名所である奈良県吉野町と並び称されるほどの山桜の名所であり、国の天然記念物にも指定されている桜があることをご存じでしょうか?

かつて関東一と称された玉川上水のヤマザクラ並木「名勝小金井桜」は、徳川八代将軍吉宗公によって吉野の桜と桜川の桜が交互に植えられたものであり、また、水戸に流れる川「桜川(当時は箕川)」は、かつて水戸光圀公が桜川市の桜を気に入り、桜川市から数百の桜を移植させ川の名前を「桜川」に変えてしまったからだそうです。歴史的にみても、桜川市の桜が市外・県外にまで広がっていることが分かります。

桜川市には約55万本ものヤマザクラが自生していると言われており、パッチワークのような色とりどりの桜を見ることができる


農業をはじめ、石材業や歴史的な町並み、そして、特色的な歴史のある桜。

数多くの資源があるこのまちで、クラセル桜川が最初に手をつけたのが、「加波山市場」という複合施設の運営※1。加波山市場は、市内の新鮮な農作物や農産物加工品、工芸品、お土産などを多く取り揃え、カフェやインフォメーション機能をも備えています。

この施設を起点にしながら桜川市の産業を活性化していくことが当面の目標とのことですが、将来的には観光業にまで発展させることを目指しているそう。

※1 加波山市場は、桜川市が整備し、その運営及び管理を同社に委託している施設。

桜川市地域振興拠点施設実証店舗の「加波山市場」。国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して桜川市が整備し、運営及び管理をクラセル桜川に委託している。実証店舗ということで、元自動車販売店だった建物を利用し店づくりのほとんどをDIYで作り上げ開業に至った。


「桜川市は、農業・石材業が主な産業で、観光産業がほとんどないまちです。しかし、当市には手つかずの魅力ある資源がたくさん眠っているので、それらを磨き上げ観光に繋げることができないかと考えていました。ただ、観光に舵を切るにしても、お土産等の地域商品や憩える場所など、受け入れ態勢が整っていない状態で市外の方を呼び込んでも、ネガティブキャンペーンになるのではないかとの懸念もありました。そこで、まずは地域の農作物や農産物加工品を中心に販売しながら、地域のあるものを活かした新しい産品を開発していくところからはじめていきたいと考え、加波山市場の開設することとなりました。」

ビジョンを持って、地域産業の活性化に向けて動いているクラセル桜川。

そんな中、近納さんは地域においてどのような課題感を持っているのでしょうか?

桜川を、誇りを持って、住み続けられるまちにしたい

桜川についてアツく話す近納さん。常に未来を見据えた行動を行っていた。


桜川市の1番の課題は、働き手が減っていること。

人口減少時代にあって、多くの地方が頭を悩ませている課題が、桜川市にもあります。

しかし、単純に人口を増やしていきたいのかといったら、そうではないと近納さんは言います。

「日本全国、人口が減少していく流れについては、どうしようもないと思っています。これまでは人口増の時代の中で社会をつくってきたわけですが、僕らは人口が減っていくというこれまで誰も経験してこなかった時代の流れの中で、何ができるかを考えることが必要だと感じています。そうした前提の中、クラセル桜川の理念でもある「暮らし続けられる」を実現するためには、まずは、今住んでいる人に桜川が良いまちだと誇りを持ってもらうことが重要です。そして、農業や山桜といった桜川市のらしさや魅力をしっかりと仕事に繋げていく流れを創ると共に、郷土愛を育む幼少期の原体験づくりによって将来は戻りたいという意識を醸成することが大切だと思っています。」

 

そんな流れをつくっていく中で、市では近年、桜川市にしかない特徴的な風景を演出している「山桜」というコンテンツに目を向け始めたそう。

 

「桜川市内には約55万本の山桜が自生しており、奈良県吉野町と比べても圧倒的に多くなっています。また、そのほとんどが実生で、自然に育ったものです。日本でこのような風景を見ることができる地域は中々ないと学者からも驚かれるほどです。しかし、僕が子どもだった頃は、桜川市がこんなにも桜で歴史のあるまちだということは大人から教わりませんでした。子どもたちに自分のまちに誇りをもってもらうコンテンツの1つとして地域固有の資源である山桜は重要だと考えています。」

桜川市では、第1次まち・ひと・しごと創生総合戦略において、日本を代表する「ヤマザクラの里」の再生を掲げ、2017年4月に全国的にも非常に珍しい「ヤマザクラ課」を設置。

2019年には、「日本一のヤマザクラの里」を目指すための「桜川市ヤマザクラ保全活用計画」を策定しています。

「一本一本個性を持つ山桜、色も形も咲く時期も少しずつ違う山桜が織りなす風景を見ることができることが桜川市ならでは。これは、多様性が重要な現代の社会を象徴するものでもあるなと感じていて、山桜は観光だけでなく、子どもたちへの郷土愛の醸成や誇りづくり、教育題材としても活かせる思っています」

と近納さん。そして、実際に桜川市では、市内の小学生に桜川の山桜を題材にした絵本を制作し、配っているそう。

絵本「さくらがわ市のたからもの」の一シーン。桜川の桜の多様性を伝えている。出典:桜川市電子図書館


山桜をシンボルに掲げ、様々な取り組みがはじまりつつある桜川市。でも、「山桜」が市民に認知されるようになったのはここ数年。

吉野と比べて知られていなかったり、春以外の季節にも桜のまちだということを知ってもらうこと。

仮にヤマザクラで人を呼んでも、これといったお土産がまだまだ少ないといった地域産品のこと。

ヤマザクラそれ自体だけでなく、それを起点にどうトータルで桜川市の魅力を考えていくかが、求められそうです。

ヤマザクラ課の設立による桜の保全・活用やクラセル桜川設立による民間による産業活性化等、徐々に様々な芽が生まれている桜川市。その一方で、考えがいのある課題がまだまだ眠ってそうな桜川市。そんな桜川市では、if design projectにどんなことを期待しているのでしょうか?

if design projectに期待すること

「今回のテーマは桜ということで、ヤマザクラに一度焦点をあてた際に、どんな広がりが生まれるかが楽しみです」

桜川市の桜は知れば知るほど奥が深く、様々なストーリー・歴史があります。けれども、近納さんは、あまりそれに捕らわれずに、桜川市や山桜のことを何も知らないくらいの人に参加してもらいたいと言います。

「桜川市を知らない人が、この場所を初めて見た時にどこに注目してくれるか。外のヒトだからこそ気づける価値がまだまだあると思っていて、ヤマザクラそれ自体でもいいし、ヤマザクラが成り立っている背景から、里山や生物多様性、山のアクティビティ開発等にもアイデアが広がっていってもいいと思っています」

市内には、「つくば霞ケ浦りんりんロード」といったナショナルサイクルルートにも指定されているサイクリングロードや大自然の中での乗馬体験、石切り場を活用したオフロードパーク、キャンプ場、孔雀が放し飼いされている「雨引観音」等、企画の種となりそうな資源が多く眠っています。こうした地域資源を深く理解し、捉えなおし、再編集していく、そんな視点や企画力が求められていそうです。

近納さんは、

「自分事として考えてくれる人にぜひ来てほしいです!自分が考えたものを実現する意欲のある人と一緒に活動していくことができたらいいですね」

とも言ってくれています。

桜川市の桜には多くのストーリーが詰まっており、「桜」を題材にしたテーマで考えることで、全国初の取組みが生まれるような企画ができあがるかもしれません。

if design projectにぜひご参加いただき、ここでしか出せなかったと思われるような企画をぜひ一緒に考えていきましょう!

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【こちらの文献もぜひ読んでいただき、イメージを膨らませた上で、エントリーお待ちしています!】

出典:

①筑波経済月報  2019年 2月号 

https://www.tsukubair.co.jp/wp/wp-content/uppdf/mreport/2019/02/201902_02.pdf

②桜川市ヤマザクラ保全活用計画

https://www.city.sakuragawa.lg.jp/page/page006073.html

③桜川市 観光協会

http://www.kankou-sakuragawa.jp/