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第4期テーマ「アウトドア×地域」にわけん インタビュー記事

if design project第4期のテーマ「アウトドア×地域」のテーマオーナーとして参画いただくのは、鹿嶋市の作庭事務所「にわけん」の須藤謙さん。

須藤さんは、茅ヶ崎から鹿嶋へUターン移住後、作庭事務所「にわけん」を営みながら音楽フェスの企画運営など地域での楽しみ方を創出する活動を行い、2020年2月には地域コミュニティBe One Designを設立。

今回は、鉄道会社からの転職と2度の移住後、地元鹿嶋で地域活性の活動を続けている須藤謙さんにお話を伺いました。

作庭事務所にわけん代表の須藤謙さん。鹿嶋の自然豊かな場所にて。


歴史とスポーツの2大スポットがあるまち、鹿嶋。

鹿嶋市といえば、常陸国一之宮として関東随一の歴史を誇り、最強のパワースポットとして大勢の参拝客が訪れる鹿島神宮が有名です。

また、クラブワールドカップ準優勝、Jリーグ最多優勝数という強豪クラブ、鹿島アントラーズのホームスタジアム、茨城県立カシマサッカースタジアムがあります。試合が行われる日には県内外から多くのサポーターが訪れ、定番の「もつ煮」や鹿島灘の「しらす」などのスタジアムグルメも名物になっています。

2大コンテンツにばかり注目が集まる鹿嶋市ですが、豊かな自然も有しています。東の太平洋は「鹿島灘」と呼ばれ、良質な漁場を生み出し、海水浴シーズン以外にも波を求めサーファーや釣り人が集います。

西の「北浦」は日本で二番目に大きな湖「霞ケ浦」を構成する湖で、夕日の名所でもあり、晴れた日には筑波山の姿を見ることができます。また、北浦に建つ「西の一之鳥居」は水上鳥居の中では日本一の高さを誇ります。

市の沿岸部には鹿島臨海工業地帯が広がり、鉄鋼業や石油化学等の企業を有する産業の街でもあります。そのため、県外から転勤や就職で鹿嶋市にやってきて、そのまま茨城に暮らしの場所を構える人も少なくありません。しかしこの工業地帯の一角である日本製鉄の高炉の一部が廃炉予定になっており、今後の人口減少が喫緊の課題となっています。

茨城県立鹿島サッカースタジアム。春には周辺をぐるりと囲む桜が咲き誇り、多くの観戦客で賑わいます。


湘南から鹿嶋へのUターン、ガーデナーへの道のり

須藤さんはもともと鹿嶋市出身。高校はひたちなか市の高等専門学校へ行き、卒業後は東京勤務の大手鉄道会社へと就職しました。

会社員時代からいずれ何かで独立しようと思っており、帰省したときにたまたま入った茨城のカフェの庭を見て、庭の世界でやっていこうという意識が芽生えたそう。ご両親の趣味が庭いじりで、子供の頃からその手伝いをし、庭や自然、体を動かすことが好きだった事も影響しているとのことです。

須藤さんはとてもアグレッシブに活動される方。ご自身で作庭事業を始めようと思い立ってからは

作庭雑誌に載っていたガーデナーアポをとり直接会いに行き、その中で出会った理想の作庭事務所に直談判し、弟子となったそうです。

湘南にあるその事務所で2年ちょっと働いたのち、茅ヶ崎で独立。茅ヶ崎で4年間を過ごしたのち、32歳の時に結婚とお子さんを授かったことがきっかけとなり、鹿嶋にUターン。

「鹿嶋に来てからの仕事は作庭事業で、にわけんとして直接受注を受け始めました。帰ってきた当初は新たな顧客を得るためにポスティングをして回ったり、飛び込み営業をしたりと地道なコトを続けながら、お客さんの獲得をしてきました。現在は庭をデザインする仕事以外に茨城で需要の高い外構工事なども受け、徐々に仕事が安定していっている状況ですね」

そんな活発な経歴をお持ちの今回のテーマオーナーの須藤さん。ご自身の作庭事業だけでなく、地域での活動も徐々に行い始めます。

地域をデザインする、BE ONE DESIGNについて

仕事が安定してきた頃、かねてより誘いのあったかしま青年会議所(以下、かしまJC)にも参加。鹿嶋市のお隣、神栖市波崎で行われる「波フェス」の企画運営を行いました。「昔から音楽フェスの企画には憧れがあったんですよね。でもこの地域に音楽フェスは無かったので『無いなら自分たちでつくろう』ということで、みんなでゼロから立ち上げていきました」

鹿行(ろっこう)地域初の音楽フェスとなった波フェス。第1回目の開催では、クラウドファンディングでも多くの応援があった。「波フェス当日を迎えて初めて、自分たちの手でこのフェスを作ったんだという実感が沸き、終了後の打ち上げでは皆で涙しました」と須藤さん。(写真は2019年開催のもの)


かしまJCとともに波フェスを始め地域活動に取り組んできた須藤さんは、40歳を迎えてかしまJCを卒業。しかし須藤さんの活動はここで終わりではなく、これまで出会ってきた共感しあえる仲間とともに、2020年2月、新たなチームを結成。それが、須藤さんがリーダーとして活動する「Be One Design」。音楽イベントを通じて、地元の魅力発信、市民コミュニティの創出、自然環境保全を推進していく任意団体だ。

「『みんなが1つになれる地域をデザインする』という意味を込めて、Be One Designという名前にしました。チームの大きな目的の1つが、コミュニティの形成。地域の中に遊びでも仕事でも繋がれる仲間を集めていきたくて、そのための手法として、音楽フェスに関する活動や、地域PR、エコ活動等に取り組んでいます」

Be One Designを立ち上げ、積極的に地域の取組みをされ、鹿嶋を愛している須藤さん。そんな須藤さんが現在考えている鹿嶋の課題とは何でしょうか?

豊かな自然の中で過ごす、持続可能な遊び場作り

2大コンテンツがあり観光資源が豊かな鹿嶋市ですが、まだ手をつけられていないテーマがあります。それが今回のテーマである「アウトドア」。

都内から車で2時間、成田空港から車で1時間という立地で、海も湖もあり森林が多い鹿 嶋市ですが、アウトドアやアクティビティはまだスポットライトを浴びていないのが現状です。

鹿嶋市にある豊かな自然。

有名なスポットとして、東京ドーム約2つ分の敷地面積を持つ大野潮騒はまなす公園。

鹿島灘の潮騒が聞こえる広大な園内には、海に向かって滑り降りるすべり台や自然の沢を利用した渓流散策路があり、自然の中で子どもも一緒に楽しむことができます。ハマナスや桜、ツツジなど四季折々の花が咲き、家族の憩いの場となっています。

鹿嶋市の西部に位置する北浦は、琵琶湖に次ぐ全国2位の大きさを誇る霞ヶ浦に属する淡水湖。茨城県と千葉県に跨がる水郷筑波国定公園に指定されおり、湖ならではの水生植物や水鳥の姿が見られます。1周73km、穏やかに波打つ湖面を見ながら爽やかな風を受けライドする北浦湖畔サイクリングは、初心者も楽しめる隠れた名所です

その一部は「つくば霞ヶ浦りんりんロード」に組み込まれており、22kmの湖岸鹿島神宮コースは文化・景観・食が満喫できるサイクルツーリズムの可能性も含んでいます。

夕暮れに染まる広大な霞ヶ浦湖畔と、そこに建つ「西の一之鳥居」。


鹿嶋市の東側に位置し、暖流と寒流が入り混じる海でイワシやサンマの好漁場となっている鹿島灘。鹿島灘に面して平井・下津の二つの海水浴場があります。海の透明度が高く砂もきれいな所が特徴的です。残念ながら今年はコロナの影響を懸念し、海水浴場は開設中止。しかし、人が少なく静かできれいな海を求めて年間を通し多くのサーファーが訪れています。

ウユニ塩湖の様な海。海風を利用した風力発電の風車は迫力満点だ。


「海のある街に住みたい」という思いを持ち、地域おこし協力隊として移住した地域コーディネーターの松崎侑奈さんの様に、鹿嶋の海や自然を求めてくる移住者もいます。

「キャンプ場がない鹿嶋日常的に利用できるキャンプ場を作ることを夢見て構想を膨らましています

私の考えるアウトドアのイメージは野宿、ブッシュクラフト、ソロキャンプといった無骨な感じ。食べたいものを焼いて、飲んで語らうような。電気は無くて、井戸を掘って水を使うとか。

お客さんにはそこを自分の場所にしてもらって、いつでも行けるような感じがいいですね。例えば、空いた時間にフラッと本を読みに行くだけの場所とか。すごく豊かで贅沢な暮らしぶりだと思うんです。」

また、ガーデナーの視点から考えるキャンプ場の姿もあります。

「環境をあまりいじずに、自然をそのままに使いたいんです。オフグリッドのキャンプ場も面白いと思います。職業柄、キャンプ場のランドスケープをデザインしたいと思っているので今回のこの機会を生かして実現したいです!」

(オフグリット=電気、ガス、水道など生活に必要なライフラインを公共事業に依存せず独立した方法で設計された建造物や生活様式のこと。)

 

キャンプ場のハード面もそうですが、プラン作りもわくわくする所です。

「ウォーキング、トレイルラン、ロードバイクなどのアクティビティも可能だと思います。鹿嶋にはウォーキング愛好者の鹿嶋市民が作る本格的なウォーキングコース「神の道」があったりと、アクティビティに意識が高い方々もいるので、コラボ企画も面白いかもしれないですね。」

水田地域や森林では初夏の夜に蛍を見ることもできる。


if design projectに期待すること

関東屈指のアウトドアの聖地になるようなキャンプ場の設営、鹿島灘を使ったサーフィンや釣りなどのアクティビティを絡めた企画が出来たら面白いですね。既存の企業活動に頼らず新たな取り組みで持続可能な楽しさを作れるようなアイディアが出てくることを期待しています。遊び、経済、環境、文化が共存した形が実現できれば持続可能になり得ると思います。

 

須藤さんが協力者に求める人は、

「自分で商売している人、自分の特技で事業をやっている人、地方を面白がって移住してくれる人。そして、活動の表現をしてくれるデザイナーさんや、アウトドアのプロにもいろいろ教えてもらいたいですね。」

 

鹿嶋の「アウトドア」はまだ手をつけられていないテーマになります。これまで見落とされていた豊かな自然を中心に地域の魅力を掘り出し再編集することで、須藤さんの言うような関東屈指のアウトドアの聖地につながる企画ができあがるかもしれません。

if design projectにご参加いただき、ここでしか出せなかったと思われるような企画を一緒に考えていきましょう!

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【こちらの文献もぜひ読んでいただき、イメージを膨らませた上で、エントリーお待ちしています!】

出典:

いばらき移住定住ポータルサイト Re:BARAKI 茨城のヒト・コト・バ

https://iju-ibaraki.jp/feature/people/6816.html

鹿嶋市観光サイト

https://city.kashima.ibaraki.jp/site/kankou/

まちづくり鹿嶋
https://machi-kashima.jp