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第3期テーマ「祝い×地域」小野写真館株式会社インタビュー記事

if design project第3期のテーマ「祝い×地域」のパートナー企業として参画いただいた株式会社小野写真館。

小野写真館は1976年に設立。当初は、ひたちなか市の総合写真館として営業をしていましたが、現二代目社長である小野哲人さんに継業してからは、「家業から企業に」というキーワードを元に、ウェディング事業から成人振袖事業等、様々な新規事業を立ち上げ、成長されてきた企業です。

今回は、そんな成長を支えてきた小野写真館の代表取締役 小野哲人さんに企業への想いや現在の課題感についてお話を伺いました。

熱い想いを語る小野哲人さん。小野写真館運営のウェディングレストランにて。


「写真を撮る」から、「写真を撮る体験を増やす」

元々外資系の金融企業で仕事をされていた小野さん。
当初は、起業を目指していたそうですが、小野さんのお母様から写真館の継続について不安を打ち明けられた時に、引き継ごうと決心。また、こんな印象的なこともあったそう。

「当時起こった新潟中越沖地震のニュースで、避難された方のインタビュー記事などを見ている中で、家の中から持ち出したのが携帯や財布ではなく、写真だったっていうのを見たんですよ。もしかしたら死ぬかもしれないという状態の人間が、最後に家族写真や好きな人の写真を持って逃げたと。その時まで、自分は写真館で生まれ育ちながらも、写真っていう媒体に対して、特に興味がなかったんですが、そのニュースを見て、写真っていうものが、こんなにも人生にとって大事なものになるんだと感じたことを強烈に覚えています」

それまで、継業を決めたものの、まだどこかで悩んでいた小野さんは、そこからスイッチが入り、世の中に写真を撮る体験を増やすということへの使命感に駆られたそう。

「東日本大震災の時にはボランティアへ行ったんですが、何千枚もの落ちていた写真が集められた場所の中から、被災者が必死に写真を探し、見つけて喜んでいる人の姿を見たんですね。それを見て、写真を残すビジネスが世の中に貢献できるものなんだということをより強く実感しました」

そんなスイッチがいくつかあった中、小野写真館は現社長の小野さんが継いでから急成長。15年間で年商や社員が10倍になったというのだから、驚きです。

「「自分たちで価格をつけられるビジネスだけをやろう」というビジネスの哲学があったので、下請けの結婚式場の撮影や学校アルバムの撮影などを全部辞めて、自分たちが価値を作れる「ブライダル事業」や「成人振袖事業」を展開していきました。」

今では、「ブライダル事業」として、結婚式場やウェディングレストランの運営や式自体のプロデュースを、「成人振袖事業」として、振袖専門レンタルや成人式専門写真館の運営を行っています。

運営する結婚式場「アンシャンテ」。横浜や東京に同ブランドで進出している。


そして、古くから残る「フォトスタジオ事業」として、創業の地ひたちなかだけでなく、「Cocoa」という少人数の貸切型スタジオを、茨城県内各地や千葉、東京、神奈川にも出店し、大きく事業を展開していきました。

少人数の貸切型スタジオ「Cocoa」。イベントもここで開かれている。


そんな成長を続けてきた小野写真館ですが、現状に満足せずに更なる展開を見据えています。

「感動体験を創る」企業へ。そして、新型コロナウイルス

「実は、今年の1月に結婚式と成人式と七五三というものが、10年後にはなくなるんじゃないかという予測をもとに、それらに頼らない感動体験を創る会社になるんだということで、会社のコアバリューを見直しました」
(小野さんの決意表明は詳しくはこちら

小野写真館のこれまでの事業の根幹は、結婚式、成人式、七五三の3つでしたが、時代の変化に一早く対応していくため、会社のコアバリューを既に見直し始めていた小野さん。
そんな時にちょうど新型コロナウイルスが世界を襲います。

「感動体験を生み出す会社に、10年かけてやろうと新年明けて宣言していましたが、この新型コロナウイルスで、直近の課題になってきました」

今回のコロナウイルスを受け、小野写真館の事業が不要不急の産業だったということを突きつけられたと、小野さんは言います。しかし、それでも自分たちの事業は人の心の豊かさにも繋がるものだとも、自信を持って言い切っていました。

結婚式や成人式もコロナウイルスがあってもなくても、この先どういう形になっていくかわからない。忙しい現代になり、「祝う」という行為自体が薄れていってきているようにも感じる昨今において、どうここから新たな「感動体験」、「祝いごとそのもの」をデザインしていけるか。

今回のif design projectの最初の問いはまさにここです。

茨城県という立地や環境をチャンスに捉える

東京にはない、ゆとりがある環境を有する茨城県(ひたちなか海浜公園)


茨城県自体は、海や山、自然も豊かで、農業や食も盛ん、そして東京から近い地方・田舎でもある。密集しない、ゆとりのある豊かな環境、そして首都圏からも来やすい茨城県はこんな時代だからこそ、さらに価値を高められるのではないか?と小野さんは言います。

「都道府県魅力度ランキングで毎年最下位を走る茨城県はチャンスでしかない。株で言ったら、今のうちに買っておいた方がいい県が茨城県だと考えています。また地方から流出していった優秀な人材に戻ってきてもらうという意味では、新型コロナウイルスのこの状況はチャンスなんじゃないかと思っています」

予期せぬ事態に見舞われ、苦境に立たされているにも関わらず、小野さんの目は既に未来を見据えています。実際、オンライン×オフラインを想定したオンライン結婚式など、この状況下だからこそできることを既に模索し、動き始めているそう。

小野写真館が仕掛けるオンライン結婚式の様子


また、茨城県自体は、挙式や披露宴1件あたりの売上高が全国上位であったり、一部の地域では七五三を盛大に祝う文化が残る県でもあります。さらには、茨城県の日立市は45年前から全国に先駆け、入学祝いに市からランドセルを送る文化があったり、小美玉市では、日本一の鶏卵の産地という特徴を生かし、妊娠祝いに「初たまご」を贈るなど、県としても様々な形で「お祝い」が盛んな地域とも言えます。

事務局としても、そんな地域性や文化も学びながら、「祝う」そのものの視点を拡げていって欲しいと思っています。本来悪魔祓いや収穫祭としての意味あいであったハロウィンが、日本の原宿から仮装を楽しむ日・文化に意味が変わっていったように、日常にある、あらゆる物事を見つめ直し、「祝う」そのものを考え直す・意味を捉えなおしていくことで、新しい「祝い」の文化を茨城から発信していく。そんなプロジェクトがif design projectを通して生まれたらという期待をしています。

そして、小野さんからもif design projectへの期待感をお寄せいただきました。

if design projectへ期待すること

社員の皆様含め、熱意のある小野写真館。いい人材が揃っていると誇る小野さん。


「自分たちで新しい「祝う」や「感動体験」を考えた時、どうしても自分たちの成功体験、つまりは結婚式、成人式、七五三を中心に考えてしまいがち。もちろん、それが軸になってもいいですが、この業界に関係なく、様々な背景を持った、地方や茨城自体に興味を持っている方や新たなプロジェクトをつくろうとする意欲のある方たちが、ゼロからイチへと考えるプランというのはとても楽しみです」

業界のことをよく知らない方々にこそ、このテーマについて考えて欲しいと語る小野さん。
さらに、

「企業としては売上がなかったら生きていけないし、売上にならないものっていうのは最終的には人を幸せにできないとも思っている。ただ、その発想でやるとどうしても小さいものができてしまうのも事実。その枠を超えた提案が出てくるかもしれないと考えるとすごくワクワクする。また、ダメになった結婚式場を買ったり、M&Aもしながら成長してきた企業でもあるので、参加者の誰かがこのプランで起業したいなんて人が出てきて、自分としてもこれは面白いと思ったら、出資するなどの後押しをしてもいいなと思っている。これは別にこのif design projectに限らず、いつも思っていることなので。」

社長として、事業を拡大してきた小野さんならではの視点が伺えます。収益性も考えながら、自分たちでは思いもよらない、どんなビジョンを持ったプロジェクトが生み出されるのか楽しみにされていました。

終始、熱く想いを語ってくださった小野さん。社員の皆さんも熱い想いを持って、企業を、そして社会をより良くしようと誇りを持って仕事をされている姿が印象的でした。

そんな、彼らとの協業も見据えながら、ここから発信できる新たな「祝いごと」をデザインしていきませんか?10年後、20年後、当たり前になっているような「祝いごと」を生み出すのはここからかもしれません!