第3期テーマ「ツーリズム×地域」 株式会社かすみがうら未来づくりカンパニー インタビュー記事
if design project 第3期のテーマ「ツーリズム×地域」のパートナー企業として参加いただくのは、株式会社かすみがうら未来づくりカンパニー。
かすみがうら未来づくりカンパニーは、日本で2番目の大きさを誇る霞ヶ浦と、その豊かな流域で育てられる農作物、平坦な地形を活かしたサイクリングコースなどの豊富な地域資源を活かした体験型観光の推進役として2016年に設立。
今回は、そんなかすみがうら未来づくりカンパニー代表取締役の今野浩紹さんにお話を伺いました。
自転車とフルーツで脚光を浴びる街
かすみがうら市は、全国第2位の面積を誇る湖「霞ヶ浦」と筑波山系の山々にはさまれた、豊かな自然に囲まれた街です。恵まれた自然環境と温暖な気候を活かした農水産業が盛んで、梨や栗、レンコン等の栽培や、霞ヶ浦沿岸におけるワカサギやシラウオなどの漁業が行われています。また、多数の観光果樹園を有し、市内約50か所で果物狩り体験をすることができるエリアでもあります。
さらに、茨城県では日本一のサイクリング環境の構築を目指し、ナショナルサイクルルートにも指定された「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の整備を進めており、かすみがうら市においても、サイクリング環境を活かした地域活性化の機運が高まっています。
お話を伺った「かすみがうら市交流センター」内にもカフェ、シャワールーム、コインロッカー、無料休憩スペース、レンタサイクル、BBQ場、駐車場などが用意されており、市として「サイクリング」に力を入れているのがとてもよくわかります。
かすみがうら未来づくりカンパニーでは、「かすみがうら市交流センター」の管理を受託し、そこを拠点としながら、大きく4つの事業を展開。
サイクリングを通して地域の魅力的な資源に接することができる体験型サイクリング「ライドクエスト」の開催、地産地消のヘルシーなメニューが楽しめるレストラン「かすみキッチン」の運営、市内の農家等と連携し「商品開発やデザイン」、それらの商品が売られる「かすみマルシェ」の運営を行っています。
「ここを訪れるサイクリストは、ベテランからビギナーまで年々増えていますね」
と今野さんは言います。
全長180km、霞ヶ浦を一周し、筑波山へ向かう変化に富んだコースを持つ「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の整備や、都心からのアクセスの良さ、全国的な自転車人気の高まりもあり、年々、訪れるサイクリストたちが増えているようです。
サイクリスト向けの環境整備は、ここ数年で急速に進み、2018年には、最寄り駅でもある土浦駅にサイクルショップやカフェ、ダイニング、シャワー、ロッカーが揃う駅ビル「PLAY atre TSUCHIURA」がオープン。今年になり、その「PLAY atre」内に自転車と共に泊まれるサイクリングホテル「星野リゾートBEB5」も開業するなど、霞ヶ浦地域はサイクリストから熱い視線が注がれています。
「自転車とフルーツ狩りが楽しめるツアーが人気なんです。女性の方に多く利用してもらっていますね」
自転車で観光スポットをアクティブにめぐり、フルーツをはじめとする美味しいものでお腹も満たせてしまうツアー「ライドクエスト」は、かすみがうら未来づくりカンパニー設立時からの人気プログラム。
地域性あふれる食の魅力と、自転車ブームがかけ合わさって、ここにしかないツアーが出来上がっている霞ヶ浦。健康志向で、食にも敏感な女性たちに支持される理由も頷けます。
サイクリングを中心とした様々な機運の高まりや多くの魅力的コンテンツがあるなか、今野さんはどのような課題感を持っているのでしょうか?
かすみがうら未来づくりカンパニーが目指す「みらい」
「茨城は農業や工業に支えられているから、観光は農業をベースとしたお祭りと言った空気感がありますね」
フルーツ狩りも観光帆引き船も、もともとはフルーツの生産や漁業といった地域の生業があり、のちに観光化されてきたものです。生産者にとっては生活であり、日常風景であるものが、観光という切り口によって新たなサービスに生まれ変わりました。
そんな地元の人にとっては当たり前のものでも、外の人に見てもらった時に、まだ気づけていない資源が、この地域に眠っているのかもしれません。
一方で、自然が豊かなのは他の地域でも言えること。霞ヶ浦と同じように東京から1、2時間で行ける場所は,例えば熱海であったり山梨県も、千葉県もあります。これらの地域とも差別化を図っていかないといけない。その差別化の1つが「サイクリング」ですが、より多くの人に訪れてもらうためには、「いかに特徴的な場所だと印象づけられるか」が課題だと今野さんは言います。
そんな課題があるなか、初日の出と言えば、茨城県内では大洗が有名ですが、最近は、霞ヶ浦も隠れたスポットとして人気になってきているそう。「特徴的な場所」としての認知を得る上でのヒントになる動きかもしれません。
「朝、いいね。ってみんな気づき始めてきた感じがしますね。
ワカサギ漁も朝行われますし、フルーツ狩りとの相性もいいですね。前泊してもらって、朝のコンテンツを楽しんでもらえるといいなと思っています」
と語る今野さんの目が期待で輝いています。
そんなニーズも相まって、築100年の古民家がゲストハウス(古民家 江口屋)としても開業します!(2020年7月下旬オープン予定)
かすみがうら市交流センターから歩いて行ける距離にあって、かまどや、五右衛門風呂もあり,自炊もOKとのこと。そしてサイクルフレンドリーな街ならではの、自転車置き場まで完備!滞在型のコンテンツもこれからさらに増えていきそうです。
また、かすみがうら市交流センターの近くにあるかすみがうら市歴史資料館には,地域の歴史や文化に詳しい学芸員の方もいらっしゃるので、ツアーやサービスにそうした地域の人々に関わっていただくことで,地域をより深く知ることができ,体験の幅が広がると今野さんは言います。人も地域資源と捉え丁寧に紡いでいく姿勢が伺えます。
if design projectに期待すること
「新たな価値を発見してほしいです。朝日の良さも、僕らが来た時は注目されていなかったんです。それが毎年毎年、新たな発見によって、人が増えてきています」
日常のありふれた光景の価値に気づくのは、住民や地域をよく知る人には難しいものです。外の人だからこそ、気づける価値がまだまだ隠れているのではと今野さんは考えています。
「どうやったらこの地域を選んでくれるかなって、常に考えています」
都心からのアクセスも良いのが強みの一方で、ライバルとなる地域もたくさんあるため、どうやったらここを選んでもらえるかを考えている日々だそう。参加者の皆様には,地域に眠る観光資源の発見といったコンテンツ開発だけでなく、点在する資源をつなげ、面としてどう捉えていくかといったアプローチの側面での参画にも期待を寄せています。
今回の霞ヶ浦地域は、自然・食・体験・文化といったコンテンツが十分に揃っている上に、インフラやハード面も充実したエリアであり、魅力あふれる地域資源を深く理解し,捉え直す編集者の視点と、ライバルに引けを取らないようなキャッチーさを作り出せる演出家の視点が求められています。
if design projectにご参加いただき、地域の人々と関わりながら、新たなサービスや商品、体験を作り上げていくプロセスは、ここでしか味わえない経験になるはずです。ぜひ、一緒に考えていきましょう!