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農×地域  農事組合法人宮崎協業がif design projectにかける想いとは?

if design project第2期にパートナー企業として参画いただいた農事組合法人宮崎協業。

蔵の街、結城市に48年前からある、茨城県内でも随一の大規模農業を営む農事組合法人です。

今回は、宮崎協業創設三代目であり、理事の秋元勇人さんにお話を伺ってきました。

意気込みを語る宮崎協業三代目の秋元勇人さん。ネギを栽培するビニールハウスにて。


農業大国いばらき随一の大規模農業を営む宮崎協業

茨城県は北海道、鹿児島に次ぐ、全国屈指の農業大国。

肥沃な大地と海や山、そして温暖な気候に恵まれた茨城は、豊富な食材を生み出す食の宝庫と言われています。県内各地の特徴を活かし、生産された様々な農林水産物は、全国第一位の生産量を誇るものも珍しくなく、首都圏の食糧供給基地なんて言われることも。

そんな茨城県の県西、都心から2時間もかからない場所にある結城市に、大規模農業を営む農事組合法人宮崎協業があります。

「農事組合法人」とは、一人ひとりの農家が協業し合い、農業生産の効率を向上させ、共同で利益の増進を図っていく法人形態のこと。たとえば、小さな農地を一農家で管理するのではなく、それぞれが自分の農地を出し合い、皆で大きな1つの農地として管理し合うことで、大型の農業用機械なども使い合えるなど、効率化を図ることができます。カーシェアやシェアハウスなど、今の時代で言うところの「シェア」の概念にも通ずるものがありそう。

そんな農事組合法人を、先々代である秋元さんのお爺さまが、”宮崎”という一集落の農家をまとめ、つくられたのが、”宮崎”協業。今では県内随一の規模を誇る農事組合法人となっています。

さて、結城市といえば、国の重要無形文化財にも登録されている「結城紬」の生産が盛んに行われてきた街でもあります。真綿から手でつむぎだした最上質の糸で織られた着物は今でも結城市民の誇り。関東で3番目に蔵が多い歴史的な街を、結城紬を着て、街歩きするというのが、結城市の1つのコンテンツにもなっています。

結城紬を販売する、「今」の時代を楽しむ着物を提案する「結城澤屋」にて


旧来、結城市はこの「結城紬」が主要産業になっており、「農業」は副業的に行うものだったそうです。特に紬織りについては女性中心の仕事であったため、副業である農業の効率化を図り、女性の負担軽減を真剣に取り組んでいた地域でもありました。そんな地域特性も、農事組合法人という道を辿った要因の1つだったとか。

そして、法人設立後、二代目であるお父様が、周辺の農家さんからの信頼もさらに獲得していきながら、次第に農地管理の範囲を”宮崎”地区から、さらに広げていきました。秋元さんの代で、それをさらに引継ぎ、今では宮崎協業が作付けする農地面積は100haにもなるそうです。

見渡す限りの農地のほとんどは宮崎協業が作付けしている農地


さらに、宮崎協業は茨城県の「水稲メガファーム育成事業」のモデル企業にもなっており、結城市内の耕作放棄地を集約し、宮崎協業が管理する農地を現在の2倍、200haへ拡大することを目指しているのだとか。こんなスケールの大きい農業が都心から2時間もかからないところで見られるのだから驚きです。

更なる進化を続ける宮崎協業の農業

宮崎協業の農業を一言で表すならば、「カッコいい」や「スマート」という言葉が合うかもしれません。

よくイメージされる手作業の農作業はほとんどなく、いかに効率的にできるかを念頭に、本州では類を見ないと言われる大型農業用機械やGPS搭載の農機具、ドローンなど、機械とITの力を積極的に用いた農作業を行っています。これらを使い、麦、大豆、そば、ねぎ、米など、多くの農作物をつくっているのです。

本州でも類を見ないコンバイン(大型農業用機械)やドローンを使用してPCで農地を管理。


また、農産物を使い、干し芋や味噌などの加工食品の開発を行い、6次産業化に着手しており、その一環として地元の酒蔵と連携した日本酒づくりも行っています。子供たちに向けた食と農の体験教室や地域の小学校の田植え体験なども行っているとか。

近隣の小学校では、宮崎協業で作った大豆・麹の味噌を使ったお味噌汁が振舞われてもいるそうです。なんて贅沢な!

美味しいと評判の、宮崎協業の「干し芋」。雇用を生むため、地域の方々の手作業で袋詰めされている。


そんな今ならではの農業を突き進む宮崎協業ですが、創業時からのスローガンは「和」。

小さな集落で始まった農業を協業化するための原動力となった創始の理念は「幸せをみんなで分け合う」だそう。この理念は今もなお受け継がれており、「地域のためになっているか」を常に考えていると、秋元さんは言います。

「加工食品の開発に踏み切った1つの理由も、地域の雇用を生み出すため。何か新たなチャレンジをするときには、必ずこの理念に立ち戻って考えています。宮崎協業の農地の多くが、地域の方々から借りている農地だからこそ、その地域の方々と「幸せを分け合う」という想いは持ち続けています」

先進的な農業を行っている一方で、地域へのあたたかい想いを持ち続ける秋元さん。

そんな秋元さんが考える、課題とはどんなものなのでしょうか?

次の時代の宮崎協業を支える担い手とファンづくり

これからの宮崎協業は、①「麦・米」 ②「野菜」 ③「加工品」の3本柱を確立すること。そして、結城の主要産業をつくっていくことで、地域に貢献することを見据えています。

そのためには、この先20年を見据えた核となる担い手を獲得し、育てていくことが必要です。

秋元さんは、その人材獲得の1つとして、

「農業体験を通じた新たな人材との出会い」をつくりたいと言います。

たとえば、首都圏で働く人が農業体験を通して仕事で疲れた心を癒してもらい、その中で新たな人材との出会いをデザインしたいのだそうです。また、単純に新たな人材を見つけるための体験だけではなく、

農業を入口にし、結城へ来るきっかけづくりにもなればとの想いも。

その背景には「地域のためになっているか」の精神がありました。

単純に、農業体験を通しながら、「自分たちがつくったものを美味しそうに食べてくれる姿も見たい!」とも、楽しそうに語る秋元さんがとても印象的でした。

地域や企業の未来について話す秋元さん


if design projectでは、このような想いを受け「農業を1つの入口とし、都市と地方の新たな関係性をデザイン」することを「自分たちならどうするか?何ができるか?」を念頭に考えていきます。

if design projectに期待すること

「ドラマチックな出会いを作りたい!農業を通して結城のファンを増やしたい!」

「単発のイベントはなんとか開催しているが、もっと体系的にファンが定着するような仕掛けができないものか。固定観念に捉われず、突飛な意見も求めています。結城をもっと農業で盛り上げていきたいんです!」と熱い想いを語る秋元さん。

宮崎協業で働く方は、のんびりしている人が多いそうです。あえて人とぶつかる必要がなく、困ったことはみんなで助けるという、この集落の文化そのもの。

秋元さんは、「だからこそ、厳しいことを言って欲しい!」と、if design projectでのアイデア、そして新たな出会いを楽しみにされています。

地域の拠り所である宮崎協業が「次の世代に何が残せるのか」と真剣な眼差しで語る秋元さん。大きな課題ではありますが、とてもやりがいのある課題です。

農業自体への興味はもちろん、食にご興味ある方、都市と地方の新たな関係性づくりについて考えてみたい方などなど、ぜひif design projectにご応募いただき、一緒に茨城の農業の課題に取り組んでみませんか?

今回の提案が、次の時代の農業を創るキッカケになるかもしれません!