海×地域 大洗観光協会がif design projectにかける想いとは?
if design project第2期のテーマ「海×地域」のパートナー企業として手を挙げていただいた一般社団法人大洗観光協会。
海がある大洗を舞台に考えるにあたって、観光と経済の2軸から、一般社団法人大洗観光協会会長であり、割烹旅館 肴屋本店の若旦那、大里明さんと、大洗まいわい市場を運営する株式会社Oaraiクリエイティブマネジメント代表取締役常磐佳心彦さんにも加わっていただき、お二人にお話を伺ってきました。
海の楽しみ方を模索し続けた20年
太平洋に面する大洗町。県庁がある水戸市に隣接し、車だと20分ほどで行くことができます。サーファーが集まる場所でも有名で群馬・栃木からも人気がある海です。
「大洗は海の資源を活用したコンパクトにまとまった町ですね。」と大洗観光協会の大里さん。
大洗町は、那珂川最下流部と海とが合流する北側エリアには、アクアワールド茨城県大洗水族館や大洗磯前神社といった磯遊びを中心とした観光スポットが広がり、大洗サンビーチがある南側エリアにはめんたいパークや大洗タワーやフェリーなどの観光スポットがあります。決して大きくはないですが、エリアごとにコンテンツが豊富にある町です。
夏場は多くの海水浴客でにぎわう大洗サンビーチ
そんな大洗は、茨城県内でも随一の海水浴客を誇る町。平成30年度も県内でトップの海水浴客を誇っています。
海水浴の歴史を遡ると、いきつくのは江戸時代。当時は海水浴とは言わなかったものの、皮膚病などの疾患に効果があるとされ、「潮湯治」の意味あいで、今でいう「海水浴」が普及していたのだそう。
そんな潮湯治としての海水浴が、明治10年代ごろから、全国の海辺に海水浴場として開設されるようになり、その後の鉄道網の普及により、一気に全国的に広まることに。大洗においても、明治20年代に水戸駅ができた関係もあり、一気に海水浴客が大洗に来るようになり、海水浴旅館も次第に増えていったと言われています。
そして更に時代が進むにつれ、首都圏からのアクセスもよく、広い砂浜もあり宿泊所と飲食店が比較的多いこともあり、家族連れを中心に、レジャーとしての海水浴客が訪れる地になっていました。
しかし、その海水浴というレジャーも時代の流れとともに実は全国的に衰退傾向。「少子高齢化」や「余暇の過ごし方の多様化」など理由は様々考えられるようですが、その全国的な流れと同様に大洗の海水浴客も減少傾向にあった中、2011年、東日本大震災で震度5強の地震と4.2mの津波の被害に遭います。そこから更に、海から人が離れていったとか。
観光客で賑わう街を目指し、海の資源を活用したい大洗町としては、そういった状況を打破しようと少しずつですが、町としても様々なイベントを開催してきており、震災後もさらに町が一丸となって大洗を復興させ、盛り上げる取り組みを行ってきました。
その復興の兆しになった1つが、大洗を舞台としたアニメ「ガールズアンドパンツァー(略ガルパン)」だと大里さんは語ります。2012年にTV放映されてから、ガルパンファンが大洗に聖地巡礼として、たくさん訪れるようになったのです。その流れは今でも継続的に続いており、ガルパンファンが移住してくることもあるそう。
しかし、1つ疑問が生まれます。どうやってアニメの「ガルパン」の聖地巡礼に町として対応し、この2019年までファンを飽きさせず継続できているのでしょうか。
海の楽しみ方に多様性がある楽しい町にするために
ガルパンというアニメで人の流れが変わった一番の要因は、それを仕掛ける商工会や観光協会の有志と町の商店街の人々の信頼関係があったから。長い年月、大洗を盛り上げようと様々な取り組みを仕掛けていたからこそ、新たな取り組みであるガルパンに対する理解も寛大で、町としてやっていこうと受入体制がスムーズに整っていたそう。そして、アニメの企画段階から制作サイドと密接に連携し、ガルパンとコラボした企画を次々に打ち出すことで、ファンを商店街に呼び込むことに成功したと言われています。
また、「訪れる観光客に色々なものを売る!」という商売人的な姿勢よりも、「来てくれるときでいいからまたおいで〜」、とゆるやかでフレンドリーな姿勢がファンの気持ちを掴んだのも要因でした。そんな穏やかな土地柄が、継続的なファン確保にもつながり、移住してくる方が出てくるまでに至っているのです。
ガルパンをきっかけにし、大洗への愛が深まった方が、大洗への移住や起業を考えている人のコミュニティを形成する場として2019年6月に新しくつくった大洗のコワーキングスペースARISE。新たな動きも出始めている。
しかしガルパンはあくまで大洗に関心を持ってもらう上での、1つの要素であり、きっかけ。
ガルパンのようなアニメが好きで来る人もいれば、サーフィン好きな人、釣りをする人、クルーザーを楽しむ人、水族館を楽しむ人などなど、色々な大洗の楽しみ方をしている人もいます。楽しみ方に多様性がある大洗町をもっと好きになってもらえるように大洗の海という最大限の資源を活かして、これからの大洗ファンを増やすために様々な視点でのアイデアが必要だと常磐さんと大里さんは考えています。
大洗マリーナには、多くのクルーザーが並んでおり、その姿は壮観!街の資源はまだまだたくさんある。
「海水浴に頼らない海の観光」を考えていく
海の資源を活かしたコンパクトな町で、次に何ができるか。
ガルパンを取り入れた商店街の成功事例に捕らわれず、「海水浴に頼らない海」、「通年楽しめる海・大洗」をキーワードにしたときに、大洗は何ができるでしょうか?その視点を参加者のみなさんと意見交換をしてみたいと思い、今回if design projectのテーマーオーナーとして手を挙げたと語ってくれました。
インスタ映えを狙ったリフレクションビーチとしても発信をしている大洗。現代のニーズに合わせた様々な海の捉え方をif design projectでしたい。
通年楽しむという意味では、潮干狩り時期には実は、夏の海水浴に匹敵するほど1日あたりの観光客数は多く来ているのだそう。ただし、みんな貝をとって帰ってしまうだけで、その後、町に滞留せず帰宅される課題が残りました。この課題は、海水浴においても同様で、車でのアクセスがとてもいいだけに、海だけを楽しみ、そのまま日帰りで帰ってしまい、街にお金が落ちないといったことが多いのだそうです。
常盤さんは、次のように語ります。
「大洗には、海というフロントエンドがあり、そこを目掛けて訪れる観光客はいるが、その観光客をそのあとの動線上で受け止めるバックエンドが少ないし、可視化されていない」
例えば湘南の海では、海水浴を楽しんだ後のアクティビティ(飲食店街やホテル・その他の観光地など)も周囲に多数用意されていますが、大洗にはそれがまだまだ足りないというのです。
また、社会的にも総人口が増えるわけではないので、町に潤沢な財政が入る保証はありません。であれば、自分たちで海の使い方を設計し直し、持続可能な経済圏と環境を担保した「海の町」を作っていかなければならないと2人は未来の構想を語ります。
今回のif design projectでフォーカスをあてるのは、「大洗サンビーチエリア」ではありますが、街の多様な資源をソトモノならではの視点でとらえ、春夏秋冬、時間帯、対象となるターゲット、様々なことを考慮して、年中楽しい大洗の魅力づくりの構想を考えてもらいたいとの想いがあります。
if design projectに期待すること
奇抜で面白いアイデアもありがたいですが、そのアイデアを町の人達とどう行っていけるのか、提案する方々達はどう関わるつもりなのか、地に足の着いたアクションを取れるアイデアまで考えてもらえると、とても嬉しいとお二人は語ります。
実際に、いいなと思うアイデアや既存のプロジェクトに新しさを加えられるようなものであれば、実務レベルで一緒にやろう!と動いてくれる若手プレイヤーもいると、いつも頼りにするメンバーの顔を思い浮かべながら話されていたのが印象的でした。
また、アイデアの種を探る中で、色々な大洗の資源をソトモノの視点で見て、発見して欲しいといった想いも。
首都圏から行きやすい大洗町の魅力をわかりやすくするプロジェクトに期待する大里さん
そんな大洗のプレイヤーたちを巻き込み、この大洗という地から海の未来を変えていくアクションを考えていくのはとても面白そう。
「海」を軸にしながら、街の多様な資源を見つめなおし、
海がある地域のこれからについて考えてみませんか?if design projectにご参加いただき、多様な方々と1つのテーマに対して共創しあう、中々会社ではできないプロセスを楽しみながら、新たなアイデアを考えていきましょう!