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第3期テーマ「空×地域」 Omitama Shigotoインタビュー記事

茨城県には、羽田空港,成田空港に次ぐ首都圏第3の空港である「茨城空港」があることをご存知ですか?

茨城空港は2020年に開港10周年を迎え、開港当初は、ソウルへの一便のみでしたが、現在は国内外合わせ7ヶ所に就航し、順調に旅客数を伸ばす「地方空港の成功モデル」とも言われる空港です。
国内線は,札幌、神戸、福岡、那覇の4か所に就航し、ビジネスや国内旅行、修学旅行の拠点に。国際線は上海、西安、台北の3か所に就航(7月13日時点運休)しており、茨城空港を利用して海外から多くの人が茨城を訪れています。
また、茨城空港のすぐ隣には、航空自衛隊「百里基地」もあり、航空機ファンも訪れる場所にもなっています。

北関東の空の玄関口となっている茨城空港のある小美玉市


そんな空港がある小美玉市で、if design project第3期のテーマ「空×地域」のパートナーとして参画いただいた市民団体「Omitama Shigoto」。

「Omitama Shigoto」は、仕事、私事、志事の3つのシゴトを合言葉に、映像クリエイター、チョークアーティスト、ウェブコンサルタント、カフェオーナー、観光マイスター、民泊オーナー、酪農家、レンコン農家など、デジタルから生産者まで多彩な人財が集まり、本業の仕事を小美玉でしながら、新しい活動が生まれることをサポートしている市民団体です。

団体のはじまりは2018年、全国有数の酪農地域、小美玉市で開催された日本最大級のヨーグルトの祭典「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉」。
市民を巻き込んで、作り上げたことが特徴であるこのイベントの中で、それぞれの特技を生かして企画運営や広報活動を『私事』として中心的に取り組んだメンバーが集まり、Omitama Shigotoが生まれました。

第1回全国ヨーグルトサミット自体の様子。詳細はこちら


今回はそんな思いを持って活動をするOmitama Shigoto代表で映像クリエイターの立原陽子さんと、観光マイスターであり、渉外担当の田村美穂子さん。そして、Omitama Shigotoと連携し、地方創生に尽力する小美玉市役所 企画調整課の清水 弘司さんにお話を伺いました。

取材を受けていただいたお三方(写真左から、立原さん、清水さん、田村さん)。市民活動の拠点となっている「四季文化館みの〜れ」にて。


茨城空港がある街、小美玉市ってどんなところ?

小美玉市は小川町、美野里町、玉里村という3つの自治体が、2006年に合併し、それぞれの頭文字をとって小美玉市になりました。
空港がある小川エリア、駅がある美野里エリア、湖がある玉里エリアとして、それぞれの顔があるのが特色だそう。

「小美玉市は、水戸市とつくば市の中間にある街です。東京で働いたこともあるのでよくわかりますが、田舎過ぎず、かといって市街地でもない居心地の良い、時がゆっくりと流れている場所だなと思います。ここは北海道かな?と思えるような場所もあります」と話すのは代表の立原さん。
小美玉市でずっと暮らす田村さんも、ほどよい田舎感があり、緩やかな空気が流れるのが暮らしやすいと頷きます。

そんなのんびりな雰囲気がある一方で、小美玉市ならではの特色を清水さんが教えてくれました。
「小美玉市は日本を代表する酪農の里であり、日本一の鶏卵出荷量を誇る畜産が盛んなまちです。また、お菓子メーカーの老舗イトウ製菓やおかめ納豆で知られるタカノフーズ等、工場も多く立地しています」

生乳生産量は県内一。まちのあちこちには牛の姿もよく見かける小美玉市。

そんな、のんびりとした空気感が漂う街の中で、10年前に開港した茨城空港。この空港は街にどのような変化をもたらし、そして現在、どのような課題があるのでしょうか?

茨城空港がある街の変化とその課題感とは?

茨城空港のある街としてのありたい姿を語る3人


「空港ができてからは、その交通利便性を活かして北海道に日帰りで行く市民もいます。気軽に蟹を食べに行く人がいたり、ビジネスで農業研修へ行く人もいます。空港があることで、飛行機を見に来る人もいて、その様子が今では日常生活の一部となっていますが、普通に考えたら他にない特徴的な景色なのかもしれません。でも、県外から訪れる空港利用者にとっては、小美玉市は通過する場所になりがちです」と立原さんは言います。

まちが通過する場所になっていることについて、田村さんからは、
「せっかく小美玉市に降り立ってくれるわけですから、地産地消のおもてなしや小美玉市の魅力も体験してほしいなと思っています。出発便を待つ間に空港エリアで茨城の美味しいものが食べられたり、何か体験できたりすると、茨城での思い出が増えるんじゃないかと思うんです」

このように、空港の利用者が空港の付近で関われるポイントも少ないことが課題だそうです。
小美玉市役所の清水さんも、空港ができたことで定住人口や市内消費が著しく増えたわけではないので、今後はいかに市内への滞在時間を延ばしていくかが課題だと話されていました。

三者共に、空港ができたことによって、知名度や人の流れは変わったけど、空港がある街として、そして北関東の空の玄関口として、まだまだできることがあるはずだ!という思いがあり、その中でまずやるべきこととしては、空港利用者が降り立つ茨城空港のあるエリアの滞在率を上げることだと言います。

民泊をはじめた立原さんの家やメンバーが経営するカフェに仕事を終えた20時からから集まり、深夜に及ぶまで、何ができるのかを話し合うことも多いそう。


玄関口としておもてなしができる市民が輝く街へ

そんな課題認識もあるなかで、小美玉市は、空港近くにある「空のえき そ・ら・ら」と茨城空港を繋ぐ参道の整備や参道沿いの賑わい創出などに向けた、「茨城空港周辺まちづくり構想」をまとめたとのこと。小美玉市の清水さんは、「まだ構想段階なので、市民の意見はもちろん、if design projectに参加される皆さんに空港エリアについてより深く考えてもらいたい」と言います。

また、Omitama Shigotoのお二人も、既に空港がある街だからこその活動を個々に始めているようです。

「そ・ら・ら内にも直売所があり、小美玉の地産地消のものを手に入れることができますが、まだまだPRの余地がありますし、見せ方1つで変わってくると思っています。また、小美玉市に宿泊できる場所が少ないこともあり、空港利用者が小美玉市にとどまることをそもそも想定していなかったりします。そんな課題感もあり、自分で民泊をはじめました」と立原さん。

映像クリエイターとして、夫の裕之さん(Omitama Shigotoのメンバーでもある)と日々撮影を通して小美玉市の未来を考えている立原さん。


田村さんも、訪れた方々をどれだけもてなせるか?ということが大事だということで、観光ツアーを企画したのだそう。

空港に関わる仕事をしているお兄さんの影響で、独自に空港PRを始めた田村さん。


また、立原さんは、自身の経験からこんな想いを語ります。
「今は個々の想いを胸にしまっている市民が多いと思うんです。これをやろう!やってみようと想う気持ちをOmitama Shigotoのメンバーがサポート役になって、輝ける市民を増やしたいんですよね。私たち自身がヨーグルトサミットの企画や運営に深くかかわったことで、達成感と充実感を味わって、小美玉への愛着が更に深まったので、今度は、これから小美玉市でチャレンジしたい人のサポートをしたいんです。空港はそのチャレンジのきっかけの1つの場所となったらいいですね」

小美玉市役所の清水さんは、
「観光の強化はもちろんですが、それだけでなく空港付近の資源を使うことで、それに関連した起業創業や、プロジェクトが起きることを支援したいですね」
と力強く話してくれました。

アイデアを市役所内に持ち帰り、各部署と適切な調整をしてくれる清水さん。


今回、活動を推進・応援する積極的な市民団体Omitama Shigotoと、それらを適切にフォローアップする市役所という小美玉市一丸となったチームで、if design projectに参画していただき、バックアップ体制が強固に整っている空×地域のテーマ。
一方で、「茨城の空の玄関口として何ができるか」をテーマとした場合、利用者、住民、施設管理者など関わる人や視点が多岐にわたり、難しさがあるテーマなのも事実です。
小美玉チームの皆さんに、どのようなことを期待しているのか、伺ってみました。

if design projectに期待すること

「正直、『空港の中で』『飛行機の中で』となると、官公庁や航空会社をはじめとする関係者がかなり多くなるため、実施するまで時間がかかるので実現可能性が低いかなと思います」と語るのは小美玉市役所の清水さん。
だからこそ『空港がある街として何ができるのか』を皆さんと考えたいと意気込みます。空港から小美玉市に降り立った時や出発する時に、まだできていないこと・やれることをif design projectのみなさんと考えられる機会になるかもしれません。

また、今回、参加者と一緒に小美玉市の魅力発掘を一緒にできるのが楽しみと語るのは代表の立原さん。多様な職業のメンバーが集うOmitama Shigotoでも、ずっと住んでいる者同士だと同じような議論になりがち。初めて来る方の新鮮な意見で、小美玉市の人をハッとさせてほしいと期待を寄せます。

田村さんからは、小美玉市の食材のバリエーションの豊かさを活かした議論もできないかと胸を弾ませます。茨城県内の魅力的な食材が空港近くで食べられるようにするためにどうすればいいのかを、空の玄関口である空港で一緒に考えることができそうです。

「美味しい物を食べながら気軽に話し合いたいです(笑)。ビジネス用語を使いすぎないようなやりとりができる人だとよりいいですね(笑)」と、地域の人への伝え方に工夫ができる人がいると、空港の資源を活かしたまちの魅力がもっと伝わるはずだし、実現に向けたサポートがしやすいと考えているようです。

「様々な人が関わることで、自己表現も多様になりますし、いろいろな姿があっていいと思うんです。資源を活かしながら、活動する人がいてこそ、街はいい街になると信じています。そのため、if design projectに参加される外部の人がこのテーマについて考えてくれるのは楽しみです」と地方創生を担う市役所の清水さんがまとめます。

3人の話を聞いていると、行政も各職業の立場も関係なく、小美玉市で過ごす時間をよりよくしたいという想いが強く伝わってきました。

想いに溢れた市民団体と、それをバックアップする市役所のチームで北関東の空の玄関口をテーマに、他の地域にはないモデルとなる地方空港のある街の姿を想像していきましょう!